短編置き場・2
女は立ち上がってスカートの芝生を払うと、男を残して丘を下りていった。

男が視線を女の後姿に移す。

小高い丘は麓へ向かうほど、芝生がまばらになり、赤黒く煤けた固い土がむき出しになっていく。

丘を下りきると、すっかり緑は消えうせて、そこには不毛の大地が広がっていた。

そして、命の死に絶えた冷たい大地の上を、大小さまざまの棺おけたちが、地平線の先までもびっしりと埋め尽くしていた。

女は棺おけのひとつに近づくと、それに向かい倒れこみながら、すっとその姿を空気の中に溶かしていった。

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