黒い風船

過去



忘れない。

忘れるはずもない。


あなたへの憎しみ。
あの時の恐怖。




私は走っていた。
くったりとしたランドセルを背負って

私は走っていた。

持田サガ。本日、12回目の誕生日を迎えます、小学校5年。


朝、私の“行ってきます”に重なって聞こえた、ママの声。
『今日は寄り道しないで帰ってくるのよ。』
だから私は、走っていた。

今日は、久しぶりにパパに会える。
いつもは真夜中に帰ってくる、借金取りの、強いパパ。


2週間ぶりに、パパに会える。
あ、でも昨日、トイレに起きたとき、パパの声を聞いたや。

『高宮のババァ、死にやがった』


パパはしょっちゅうそんなことをぼやく。
でも、しょうがない。それがパパの仕事だから。





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