黒い風船
「らん、くん」
私は男子を見つめた。
無表情、冷たい瞳。
その夜中、目が覚めて、水を飲みにリビングに行くと藍くんがいた。
「ねぇ?」
私が声をかけると、藍くんはゆっくりと顔をあげ、私を見た。
「サガ。」
呼び捨てかよ、なれなれしい。
藍くんの座る、ふかふかのカーペットの横に腰を下ろす。
沈黙、ひんやりと、恐ろしくもあるほど静かな、沈黙。
「私、知ってるの。」
夜のせいか。
冷たさを帯びた、ガラスのコップに口をつける。
藍くんは黙りこくって、空中を仰いだ。
「私のパパ、殺したのは、あんたのお父さんよ。」
言ってしまった、と、思った。
うやむやなことを、こうも自信満々に。