オリジナル・レイズ

「来てくれるだろうと思ってたー。ごめんね、全いま寝てるから、今日は帰ってもらっていいかな」


優しい口調だった。
しかし、怖ろしい目。

彼女の表情を見て、私は一瞬ぞっとした。


「…体調、悪いんですか?全くん…」


おずおずと私が聞くと、全くんのお母さんは怖ろしい目のまま笑う。


「…体調が悪い?ですって…?」




次の瞬間、
バシッという音が病院中に響き渡った。




何が起こったかわからなかった。

ただ無意識に、私は自分の頬を抑えていた。

手の下で、じわじわと頬が熱く痛くなる。


「全にエイズうつして、次こそは殺そうとよみがえってきたんでしょう!!この化け物!!あんたのせいで全は…全は…ッ」


「母さん!やめろ!!」


勢いよくドアが開き、飛び出してきた全くんが私とおばさんの間に割り込んだ。

なお襲い掛かろうとするおばさんを、彼は全身で制す。


私は廊下に座り込んでしまった。


< 115 / 220 >

この作品をシェア

pagetop