オリジナル・レイズ
「来てくれるだろうと思ってたー。ごめんね、全いま寝てるから、今日は帰ってもらっていいかな」
優しい口調だった。
しかし、怖ろしい目。
彼女の表情を見て、私は一瞬ぞっとした。
「…体調、悪いんですか?全くん…」
おずおずと私が聞くと、全くんのお母さんは怖ろしい目のまま笑う。
「…体調が悪い?ですって…?」
次の瞬間、
バシッという音が病院中に響き渡った。
何が起こったかわからなかった。
ただ無意識に、私は自分の頬を抑えていた。
手の下で、じわじわと頬が熱く痛くなる。
「全にエイズうつして、次こそは殺そうとよみがえってきたんでしょう!!この化け物!!あんたのせいで全は…全は…ッ」
「母さん!やめろ!!」
勢いよくドアが開き、飛び出してきた全くんが私とおばさんの間に割り込んだ。
なお襲い掛かろうとするおばさんを、彼は全身で制す。
私は廊下に座り込んでしまった。