オリジナル・レイズ
それからしばらく、私は病院に行かなかった。
本当は会いたくて仕方ない。
心配で居ても立ってもいられない。
でも…あの時の全くんのお母さんを思い出してしまうと、足がすくむ。
本当に、例の女の子と私を同一人物だと思ってるんだ――
息子に不治の病をなすりつけた女の子。
それを怨む親心は、一見筋が通っているようには見える。
でも…
女の子だって、病気になりたくてなったわけではないのに。
そして、全くんにうつしたくてうつしたんじゃない。
むしろ自分の命を犠牲にしてまで息子を助けてくれた恩人のはず。
どうして、そこまで怨んでいるんだろう。
そんな事を考えながら、それでもやっぱり足は病院へ向かってしまう。
夜の街路樹の脇。
以前見かけた紫陽花が、まだオレンジの街灯の元で咲いている。
…そろそろこの花も終わる季節。
私は紫陽花の前で、ゆっくりとしゃがみこんだ。