オリジナル・レイズ
気づいたら私は、駆け足で病院に向かっていた。
――全くんの病室。
もう、全くんのお母さんに何言われてもいいや。
ただ会いたい。
トントン
「どうぞー」
聞きなれた愛しい声。
私はドアを開けた。
以前来た時と同じ。電気を消した薄暗い部屋の中に、全くんのベッドがぽつんと一つ。
ただ、今夜はよく晴れた月夜。窓から月の光が注ぎ込まれている。
こちらを見て手招きする全くん。
病院なのに…
好きな人が難しい病気を患っているのに…
最高にロマンチックな景色がそこにあった。
思わず駆け寄り、手招きする全くんの手を両手でぎゅっと包み込み、自らの頬に当てた。
「会いたかったぁ…」