オリジナル・レイズ
「ごめんな、この前は、母親が…」
「大丈夫だよ!全くんの体のほうが、私ずっと心配だったよ。来れなくてごめんね。ホントは、会いたくて仕方なかったんだけど…」
どうしよう。嬉しくて言いたいことが次から次へと出てきてしまう。
「あのっ、今夜はお母さん来てないんだね!」
「ああ、仕事」
「こんな遅くまで?大変だね」
すると、優しく微笑んでくれていた全くんの表情が急に曇った。月明かりではっきりとわかる。
それで即座に理解した。
全くんのお母さんの仕事って…夜の…
「全くん、ごめん」
「なんで謝るの」
うっかり謝ってしまった。
私の馬鹿。
余計に全くんに気を遣わせちゃう。
あたふたしていた私を少し見つめると、全くんは窓の外を眺め溜息をついた。
「…信じらんねーよな。HIV感染者が目の前に居るのに、体売りに行く親が居るかよ」