オリジナル・レイズ
「えっ?…」
――体を売るって?
「体って…違うでしょ?お酒飲んで接客するだけのお仕事じゃないの?」
全くんは下を向き、唇を噛み締めた。
「入院費に通院費に、検査代…毎日の薬代…もう、水商売なんかじゃ足りないんだ」
噛み締めた全くんの唇から、血が滲む。
「全くん、痛いよ?唇…」
私が近くにあったティッシュで拭おうとした瞬間、全くんは私の腕を力いっぱい払った。
「血にさわるな!うつるから!!」
びっくりして一瞬彼から離れる。
でも、すぐに理解した。
『もう水商売なんかじゃ足りない』…
全くんのお母さんは、夜のお仕事をしながら女手ひとつで全くんを高校まで行かせたんだ。
なんで今まで気づかなかったんだろう。
必死で全くんを育ててきたんだ。