オリジナル・レイズ
そんな事を考えているうちに、目的地が近づいてきたようだ。
四方八方を塞ぐように光り輝くネオン。
そう。
私は今、風俗街のど真ん中に立っているのだ。
握りしめていて少しクシャクシャになったカードを出し、店の名前を確かめようとしたその時、
いきなり後ろから腕を掴まれた。
「これから出勤の子?どこのお店?」
スーツ姿の中年だった。
お酒臭い。
体がこわばって動かない…
そう、後ろから腕を掴まれるのは二度目だ。
浜辺で襲われかけた記憶が鮮明に蘇る。
助けて、誰か――
でもあの時のように、もう全くんは来てはくれないのだ。