オリジナル・レイズ

「――そうだったか。それは、先生にはどうしようもできない問題だ。君にもね。子を想う親ってのは、そういうもんなんだよ」


酔った人で賑わう歩道と、ライトの眩しい車道の境にあるレンガの花壇に腰掛け、
隣で話す先生の声に耳を澄ませる。


先生は落ち着いたトーンで話した。



「先生も、高遠の家庭の事情は詳しくは聞いていない。ただ高遠は、今時珍しいくらい純粋な奴だ。
どこもスレてない。
あのお母さんの手によって、まっすぐに育ったんだな。良い育てられ方をしたと思うよ」



私も、そう思うよ。

いいお母さんじゃなかったら…

全くんはあんな綺麗な心を持たなかったよ。



「子供のために、親が身を削るのは当然のことだと思う。高遠の母親は、高遠が一日でも長く元気で居てくれたらそれでいいんだ。外部の人間に、それを止める権利は無いだろう?」



…それじゃあ、

子供の気持ちは?


親を心配して苦しむ全くんはどうすればいいの?


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