オリジナル・レイズ
先生は私のほうを向き、明るく言った。
「子供は、親のこと心配しなくていいの!そんなの気にしてないで、自分の為に働いてくれてありがとうって感謝して、一日でも長く元気な姿を見せてあげること。それが、最高の親孝行だから」
「でも…」
私が口ごもると、先生は静かに答える。
「例えば、借金重ねて毎日取立屋に脅されているよりも、ずっと本人達への心労は軽いはずなんだ。
闘病という同じ闇の中を彷徨っていて、金銭的な余裕が多いか少ないかじゃ、全然違うからな」
「お母さんはそうだとしても、でも全くんは…」
先生だったら、耐えられるの?
自分の親が体を売っているなんて。
経験したことない事だから、そんなふうに言い切れるんじゃないの?
ずっと下を向いていたが、反撃したくなって顔を上げた。
すると、数人の団体がこっちに向かって歩いてくる。