オリジナル・レイズ
その手を引いたまま、先生は止めておいた車の場所まで私を誘導した。
先生は、わざと後ろを振り向かずに歩いてくれたのだろうか。
私の顔面は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
鼻水も止まらない。
幼い子供みたい。
『そんなに全のこと想ってるなら、あなたが全の為に体を売れば良い』
考えた事すらなかった。
…私には、できません。
私にできないことを、あの人はやっていたのだ。
全くんのために。
そうだよ。
私なんかより、あの人のほうがずっと全くんに命を賭けている。
全くんの気持ちは重々承知の上で、ただ今は、どんな手段を取ろうと、
一分一秒でも全くんに元気で居てほしいだけなんだ。
ただそれだけなんだ。