オリジナル・レイズ

「まいったな」


困ったような顔をする先生を見て、思わず私は笑ってしまった。

そんな私を見て、先生も笑った。



ついさっきまで、顔中ぐしゃぐしゃにして泣いていたのに…

涙はすっかり乾いてしまった。


グレーのハンカチは
鼻水でべとべとになってしまったけれど、



心が軽くなった。





…あ。


そうだ。
この感じ。



車を降りるときに感じた、ドキドキでもモヤモヤでもない変な気持ちの正体…

何だか、安心に近いもののような気がする。


心臓がくすぐったいの。


車に乗り、先生がコーヒーを、私がオレンジジュースを飲んだ。


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