オリジナル・レイズ
“好きな人と一緒に死ねるなら幸せ”?
…そう思う人もいるかもしれない。
でも、それは違うって私は知っているから。
死んだらみんな一人ぼっち。
幸せな死なんて存在しないんだっていうこと。
だから、全くんには生きていて欲しいの。
毎晩毎晩、私達は星を眺めた。
車椅子の全くんも、たまに椅子から降りて芝生の上に寝そべったりした。
私が肩を貸してあげて。
幸せな 幸せな毎日
あの晩以来、全くんの笑顔しか私は見ていない。
時折寂しそうな横顔は見せるけれど、全くんが声を押し殺して泣く姿を見たのはあの晩だけだ。
子を想う親と
親を想う子…
二人の気持ちは、まだすれちがったままなのだろうか。
気になっていたけど訊けないでいた。
全くんの涙を、もう見たくはなかったから。