オリジナル・レイズ
「もうそろそろ、あの辺は種できてるな」
そう言うと全くんは、車椅子の後ろにかけていた鞄を開ける。
鞄から出てきたのはナイフだった。
…“あの時”、
襲われかけた夜に浜辺に男が置いていったナイフ…
「全くんそれ…」
私が言いかけると同時に、全くんはよろよろと立ち上がる。
「向日葵の種って、食えるんだぜ!」
全くんは得意そうに言うと、10本程生えている向日葵のうち、端の1本をナイフで切り出した。
「ちょっとっ、いいの??」
「1本くらい、平気。コイツこの中で一番枯れてるし」
確かに、端の向日葵はもう花びらをすべて落とし、黒くなった重そうな頭を垂れている。
ナイフは見事に、太い向日葵の胴を切り落とした。
…静かな月の光でナイフがキラッと光る度、私は背筋がぞっとした。
あの夜の恐怖を思い出してしまって…
全くんは、何とも思ってないのかな。
そう思った時、彼はこう言ったのだ。