オリジナル・レイズ
「今日家出るとき、たまたま鞄にナイフ入ってんの見つけたんだ!ラッキーだったな」
・・・・・・・
え??
全くんは戦闘に勝利した勇者みたいに、向日葵の首を掴みズルズルと引き摺りながら、おぼつかない足で戻ってくる。
私は肩を貸し、彼を車椅子に乗せる。
…全くん、たまたま鞄の中のナイフ見つけたって…
あの晩ナイフを拾い、鞄に仕舞ったのは全くん自身なのに。
忘れちゃったのかな。
全くんはそんな私をよそに、爪を立てて向日葵の種を取ろうとしていた。
びっくりして止める私。
「危ないよ、爪にばい菌入っちゃうよ」
「向日葵の種って、旨いんだ。昨日も食ったんだ」
「昨日も??もー、しょうがないな」
全くんから向日葵を受け取り、全くんの代わりに種を取ってあげることにした。
なるほど、向日葵の頭はずっしりと重い。
親指をうまく差し込み、もぎ取るように種を一粒手のひらに落とすと、それを全くんに差し出した。