オリジナル・レイズ
全くんは種をひょいっと口に入れ、ぽりぽりと音をたてておいしそうに食べた。
…向日葵の種なんて、全くんの体で食べて平気なのかな。
一瞬思ったが、昨日も食べたと言っていたので、
私は何となく安心して止めなかった。
校舎に背を向け、校庭から吹き抜けている大きな夜空に目を向ける。
幾億もの真夏の星座たちが、競って輝くプラネタリウム。
その輝きの中に、死が近づいている星は一体幾つあるんだろう。
風の無い蒸し暑い晩だった。
「ツバサも食べなよ。よく一緒に食っただろ」
「――え?」
「俺んち出てすぐんとこの、麦畑のまわりに、なんでか知らないけどいっぱい咲いててさぁ…」
全くんの瞳は架空を見ていた。
「せっかく持って帰っても、父さんも母さんも食べてくれなくてさぁ…」
私の手から、一粒だけ種を抜いた向日葵がするりと落ちる。
自分の背中を、嫌な汗が流れていくのを感じた。