オリジナル・レイズ

「…えっと」

先生に嘘はつけない。

怒られるのを承知で、私は正直に説明した。


絶対怒るだろうと思っていたのに、先生は吹き出した。


「向日葵の種、旨いよなー。先生もたまに食べるんだ。職員室からすぐだからな」


「えっ、嘘っ」


そんなことする人に見えなかった。

だってもう、充分大人の男の人なのに。



「もうほとんど枯れちゃったけど、真夏の日中の向日葵は見事だったよ。でも、亡くなった妹はしっとり咲く紫陽花の方が好きだと言っていた」



…紫陽花?

亡くなったHIV感染者の身内って、妹さんだったの?



「お袋がボランティア活動してたんだけど、その延長でお袋は外国に行ったんだ。
その時すでに親父とお袋は仲が悪くて、これをきっかけに離婚した。妹がお袋についてった。
先生は残って親父と暮らしてたんだ」



・・・・・・・・



…待って

その話


私、知ってる…


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