オリジナル・レイズ
ひたっと冷たいものが、ほっぺたに当たる。
「今度のは、ちゃんと冷たいよ」
笑って缶ジュースを差し出す先生だった。
もう長い時間、私は一人でここに居た。
ずっと、私のことを見ててくれたのかな。
慌てて涙をぬぐう。
隣に腰を下ろす先生。
私は缶に口つけ、ゴクンと一口飲むと、海を見ながら呟いた。
「…もう、全くんは天文学部の活動できなくなっちゃいましたね」
「なんで、できなくなっちゃったって決め付けるの?」
本当は決め付けたくなんかない。
また、目に涙がたくさん溜まってきた。
「だって、だってあんなたくさんの機械やビニールに囲まれて、体中に管があって、自分で息できなくて…
それに、精神障害に認知症だなんて…」
言葉がつまる。
声が震えてしまいそうで、私は話すのを止めた。
すると、先生がゆっくりと口を開く。
「高遠は、なんで急に天文学部立ち上げるなんて言い出したんだ?」
「…それは全くんが、生きている証を残したいって言ったから…」