オリジナル・レイズ

「え?顧問って、渡先生だったんですか?」


「おいおい、散々相手してたのに今更それは酷いな」


先生は頭を掻きながら笑った。


「高遠と君にしか触らせてないんだよ。先生の大切な天体望遠鏡は」




…不思議だ。


長い年月を経て、運命みたいに出逢ってるんだ。


先生もまさか、自分の妹が体を張って助けた相手が全くんだなんて、知りもしないだろう。

全くんも、初恋の相手が今の担任の妹だなんて、きっと想像したことないに違いない。



「先生に協力できることがあれば、するから。高遠とあの星の、生きてきた足跡を守るのは君の役目だよ。ツバサちゃん」


海から吹いてくる潮風で、先生の髪が揺れる。



「…はい」



さっきまで溜まっていた涙は、先生の髪を揺らした潮風に乗って、どこかへ行ってしまったみたいだ。

胸につかえた不安は、ジュースの酸味で溶けてしまった。


いつのまにか、私は返事してしまっていたのだ。

少しだけ湧いた勇気が、原動力になって。


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