オリジナル・レイズ
無菌室で眠ったままの全くんは、そのまま何日も目を覚まさなかった。
先生が昼間会いに行っても、窓越しで眺めることしかできないと言っていた。
私は、全くんが目を覚ますまでは会いに行かないと決めた。
もっと大切な、やるべきことがあるからだ。
ねぇ、全くん
私の祈りは、遠くからでも届いているよね?
隣で手を握ることができなくても、私はあなたの体温を忘れない。
私と先生は、中庭で毎晩夜空を眺めた。
全くんが残したカメラは先生が引き継いだが、ノートだけは新調したようだ。
「高遠は字が汚いから、同じノートを使いたくないんだ」
冗談ぽく笑って話す先生。
汚いなんて、そんな言葉を先生が口にするの珍しいな。
天文学部を提案したのは、全くんとたくさん一緒に居たかったから。
そして、全くんにずっと星を見ていて欲しかったから。
私が勝手に、全くんのことばかりを考えて提案したのだ。