オリジナル・レイズ

そんな、秋のある真夜中のことだった。

いつもと同じように星の観測をした後、帰って行く先生を見送り、私は一人研究室に入る。

ふと、ファイルがたくさん詰まった本棚に目が行く。

ひとつだけ、色の違うファイルが置いてある事に気づいたからだ。



間違えて整理されてるのかもと思い、つい開いてしまった。

するとそこには、
数々の見覚えある人の写真――


「何コレ、アルバムじゃない…」


そしてそこには、先生の…

私の…お母さんが先生に宛てたエアメールも、
大切に綴られていた。



【晴一へ
ハル、お父さんと元気に暮らしていますか。お父さんは、飲みすぎたりしていませんか。
離れ離れになっても、ハルはずっとお母さんの大切な息子です。辛いことがあったら、いつでも打ち明けなさいね。
母より】



ハルイチ兄さん
…ハル兄…

声に出して呟いてみる。



【晴一へ
無事に、こちらの国で出産することができました。とても可愛い女の子です。ハルはお兄ちゃんになったよ。
落ち着いたら電話するね。妹の声、楽しみにしていてね。
母より】


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