オリジナル・レイズ
待って。落ち着いて。
まだ決まったわけじゃない。
私は急いで床に座り込み、決定的な内容の手紙を必死で探した。
見つからないことを願いながら――
それから何年後かの手紙…
【晴一へ
今日、あなたの妹が、HIVっていう悪い菌に感染していることがわかりました。
左耳や左のお腹のブツブツが消えなくて、風邪も治らなくて、念のため血液検査を行って、それでわかりました。…】
「…嘘だぁ…」
注射器の使いまわしは危険だって、
正看護師だって准看護師だって、どこの国だって習うはずでしょ??
たとえ血管に刺さない予防接種の針だって危ないんだよ。
私にだってわかることなのに…
【感染の原因は…あの時母さんが先生に言われたとおりに行った予防接種――】
「…ッやめてぇぇ!!嘘!嫌ぁぁッ!!!」
私は何度も叫んだ。
叫べば誰かが、嘘だよと言ってくれるとでも思っていたのだろうか。
その時、誰もいないはずなのにドアが開いた。
入ってきたのは、渡先生…
「…どうした?」
しかし先生は、床に散らばった手紙や写真を見てすぐに状況を把握したようだった。