オリジナル・レイズ
…当然だろう。
だって私は、兄に一度も会うことなく死んでいった妹なのだから。
そう思っていた時、
先生はファイルが置いてあった本棚から、薄い封筒を出してきた。
「見てごらん」
先生に言われるとおり、無言でおそるおそる封筒の中身を確認する。
封筒の中に入っていたのは…
咲き乱れる青い紫陽花の中で微笑む、幼い女の子の写真。
写真は少ししわしわになっていた。
「妹の写真は、紫陽花と一緒に撮ったこれ一枚しかない。お袋が常に持ち歩いていたそうだ」
「…手紙と一緒に、写真は送られてこなかったんですか?」
「お袋はお袋で、向こうで妹のアルバムを作っていたそうだ。忙しくてなかなか制作できなかったみたいだけど、ひととおり完成したら俺に送るつもりで…」
冷静なはずの先生の、口調に感情が入る。
表情までも歪ませる。
…そして、私は耳を疑った。
「妹が亡くなってすぐ、その家が放火されたんだ。お袋はそれで亡くなった。火をつけたのは…
直後に日本に逃げて帰ってきた高遠の母親だ」