オリジナル・レイズ
「…そうだよね?ハル兄…」
翌日、私は先生の目を盗んであの街へ向かった。
全くんのお母さんが働いていた風俗街。
ここから車で20分の距離を、歩いて向かうのは無謀な事だと充分わかってた。
だから走った。
走って走って、渇き切った喉に痛みを感じたら唾を飲んで耐えた。
ようやくネオンの明かりが見えて来た頃、一体どれくらい経っていたのだろう。
それでも、人通りが絶えることはない。
夜も眠らない街。
息切れが止まらない…
とりあえず、以前先生と腰かけたレンガの花壇に腰をおろす。
目の前の歩道を過ぎてゆく人々の足元を見ながら、しばらくぼーっとしていると、聞こえてきた。
「現金?」
「もちろん、現金だよ」
援助交際の会話が。