オリジナル・レイズ

そしてきっと、苦しんでいる母親に何もしてやれなかったハル兄も…

すごく苦しかったんだよね。


「私だけ、全然苦しんでない。全くんのために体売るって覚悟してここに来たのに、結局できなかった。
私の周りには、苦しんで、もがいて、頑張っている人がたくさんいるのに…」


ねぇ、どうして私だけ苦しまないの?

みんなの苦しみを、できることなら私が全部代わってあげたい。


何の役にも立てない自分の歯がゆさに、怒りや悔しさの入り混じったやるせない涙が、次から次へと溢れていく。



先生は抱きしめる力を強め、震える声で言った。



「…充分、苦しんだじゃないか。俺なんかより、ずっとずっと苦しんでただろう。ごめんな。ごめん…」



ハル兄…


やっぱり、全くんの腕の中とは違う。



すごく幸せで、ドキドキする。

でも、

ハル兄へのときめきは、


…恋じゃなかった。



良かった…。


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