オリジナル・レイズ
【最後の日】
雪の季節がやってきた。
今日、私と先生は、
全くんが入院している病院へ向かった。
意識が戻ったとの連絡がきたからだ。
久々の病院。
渡されたマスクをし、予防衣と呼ばれるガウンを身に着け、手の消毒を受ける。
これだけ装備しても、全くんの体に触れることはできない。
ビニールの簡易カーテンの向こうに、全くんがいる。
横たわったまま、全くんは動かない。
私は先生の顔を見る。
先生は立ち止まり、私に向って何も言わずにうなずき、行くように促した。
緊張して、ベッドへ向かう足が震える。
呼吸を抑え、一歩一歩近づく。
カーテンにそっと手のひらを置き、全くんの表情を伺った。
眠っているのか、起きているのか…
それでもかすかに、まばたきをしているのがかろうじてわかる。