オリジナル・レイズ

看護師さんの声で、束の間の面会が終わる。

無理を言って面会を夜間にしてもらったのだし、仕方ない。


私達は病院を後にした。




「先生…ごめんね。先生だって全くんに会いたかったよね」


帰りの車の中で私が呟くと、先生は訊ねる。


「高遠は元気だったか?」


「元気かはわからない…。でも、ちゃんとこっち見てくれた。ちゃんと…生きてた」


「そうか。それなら、先生はそれだけで充分だ」



フロントガラスに、雪の粒がいくつも舞い降りては消えていく。

服を持っていない私に、先生は自分のまっ白いダウンジャケットを貸してくれた。



私が人間になって、もう7ヶ月が経った。

その間にいろんな事があったなぁ。

私はあとどれくらい生きられるのかな。


この雪が積もったところは見られるのかな。


明日は生きてるのかな。


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