オリジナル・レイズ

「たまには、公園でも寄ってみるか」

先生は思いついたように言い、車を街路樹の脇に止めた。

私が紫陽花を見つけた街路樹の…


「ひゃー!空気が澄んでる。気持ちいい」


「ツバサちゃん、元気だなぁ。本当にそれで寒くないの?先生の方が寒くなるんだけど」


「寒いのはわりと平気みたい」


答える私の口から、白い息が漏れる。



小さな粉雪がちらちらと降っているだけ。

落ちては溶けてゆくだけの粉雪。

少しも積もっていないのに、人が誰も居ないからだろうか、雪の消音効果はすごい。

物音ひとつ聞こえない。



宇宙に戻ってきたみたいだ。

あそこにも音は一切存在しなかった。

遠くで星が爆発するのが見えても、星と星がぶつかるのが見えても、そこに存在するのは光や放射線のみ…



全くんが過ごしているあの部屋も…

静かで寂しいだろうな。


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