オリジナル・レイズ
「どうだ? 高遠」
望遠鏡にかじりつく高遠に、担任の渡が声をかけた。
「おっ、渡センセー。
ちょっと見てください」
振り返って教師を見る男の子。
白いシャツに、校章入りの深いグリーンのネクタイをゆるく締めている。
夜の学校の中庭。夏休みはもうすぐそこだ。
立っているだけで汗が流れる。
風がない分、暑く感じるのだろう。
しかし、暑さなんか気にしている場合じゃない。
彼の胸は期待でいっぱいだ。
とても大切なことを、今から始めようとしているのだから。
全世界で誰にも発見されていない星の瞬間を、彼は見つけたのだ。
それは…
星の死んでゆく瞬間。
――言っておくが、今まで数多く発見されてきた星の死とはわけが違う。
「確かに…お前の言うとおりかもしれないな」
まだ若さが残る、30歳になったばかりの担任教師。
接眼レンズからゆっくり顔をはなす。
「センセー、じゃあ俺、天文学部立ち上げていいんですよね!!」