オリジナル・レイズ
学校を出て、全くんはぐんぐんペダルをこいだ。
「全くん、そういえば今日は、天体望遠鏡いいの…?」
表情が見えないのが不安だったが、
仕方がないので背後から訊ねる。
「ああ、今日、見てなかったな。忘れてた」
忘れてた?
あんなに毎晩みていたのに?
今日の全くんは、少し変だ。
さっきの、死んだ人が星になる話だって…。
急にどうしちゃったの?
それでも、
肩から手のひらに伝わってくる彼の体温に、
まだぬくもりのあるカーディガンから感じる彼の体温に、
ドキドキせずにはいられない。
全くんと、私と、それから自転車。
まるで夜空を裂いちゃいそうなくらい、風を切って走る。
まるで流れ星。
…本当の流星みたいに、このまま燃え尽きてもいいよ。
全くんと一緒なら。
遥か頭上では、死をひかえた赤い星がどんどん大きく膨張していた。