オリジナル・レイズ
しかし、高遠は夜空のとりこになる。
宇宙飛行士にならなくても、手に取るように星を探すことができると知ったのだ。
それを知ったのは、皮肉にも彼がバスケ部に入った後――
* * *
高校生活にも慣れてきた、5月のある日のことだった。
まだ彼が、シャツの上に紺色のカーディガンをルーズに着ていた頃。
夏の大会に向け、夜まで練習に励んでいたバスケ部。
部活動が終わり、集団で帰ろうとしたその時、
ふと高遠の目に止まったものがあった。
…天体望遠鏡。
いつもなら、実験室の隅に布をかぶせて置いてあったはず。
それがぽつんと、中庭に出ている。
そばには誰もいない。
「わり、俺ちょっと忘れ物。先帰ってて」
部活の仲間たちに一言言うと、高遠は早足で中庭に向かった。