オリジナル・レイズ

今日も、夜は来る。

私は気づくと中庭に座っていた。

そして、すぐそばに天体望遠鏡を覗き込んでいる全くんの姿。



紺のカーディガンは、私がもらってしまったので、全くんは深い緑色の校章が入ったネクタイと、白いシャツ一枚だけだ。




…細いなぁ。

こんなに細かったっけ。




夜の肌寒さもだんだんと和らぎ、少し生暖かい風が頬を撫でる。

そろそろ雨の季節。

星が見れなくなってしまう。



そんなことを考えながら全くんの様子を見ると、全くんは天体望遠鏡を覗き込んではいなかった。


望遠鏡に手をかけたまま、架空を見ている。


どうしたんだろ?


そういえば、最近全くんはぼーっとすることが多い。



「…全くん?」


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