オリジナル・レイズ
少し驚いたが、私はためらわずに頷いた。
先生はその場で携帯を取り出すと、どこかへ電話をかけた。
「…あ、高遠全くんのお母様でいらっしゃいますか。私、担任の渡と申しますが…」
ワタリ、先生。
全くんの家に、電話をしているようだ。
電話を切った後、手際よく出ていた天体望遠鏡をしまうと、
渡先生は私を促し、自分の車へ乗せてくれた。
車の中で、渡先生は私に3つ質問をした。
どこの学校?
どこに住んでるの?
名前は?
その全てに、私は答えなかった。
無視していたわけじゃない。
答えられる質問が一つもなかったからだ。
ツバサだって適当な名前なんだし…
3つの質問をした後
くちびるを噛み締めて下を向いてる私を、先生は横目でちらと見ると、
それから何も言わなかった。