オリジナル・レイズ

病院に到着すると、私は先生の後をついて少し小走りで受付へ向かった。

案内された集中治療室の前にある茶色いベンチ。


そこには既に、全くんの母親らしき中年の女性が到着していた。


「あ…」


こちらに気づき、駆け寄ってくる女性。


「先生、すみません、この度は息子がご迷惑を…」


「いえ、何おっしゃるんです、お母さん。こちらこそ注意が行き届かず…」



全くんの母親と渡先生は、こんな一大事なのに表面上の挨拶を欠かさない。

そんな二人を遠目で見ていると、全くんの母親が私の視線に気づく。




――学校側は、全くんのお母さんになんて話をしたんだろう。


やはり、一緒にいた私が全くんに怪我をさせたとか、そんなふうに伝えたんじゃないだろうか。



…ものすごい形相で怒鳴られるかもしれない。

冷たい目で睨まれるかもしれない。


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