オリジナル・レイズ

病院に着いた時は、すでに9時をまわっていた。

正面玄関はすでに閉まっている。

私はびしょびしょの体で、緊急外来の門を走り抜けると、

真っ暗な院内ですぐに気がついた。



…全くんの病室、どこ?



どうしよう。

こんな広い場所から一つの部屋を見つけ出すのは困難すぎる。



その時、たまたま一人の看護婦さんを見かけたので
思い切って聞いてみた。

怒られるかもしれなかったけど、仕方ない。

早く会いたかったから。



「あの、すみません。高遠全くんの入院してる病室を教えていただけませんか?」


「申し訳ないですが、もう消灯の時間なんですよ」


案の定の答え。


「お願いします。大切な人なんです。すぐに帰りますから」


何度も何度も頭を下げた。



しばらく黙っていた看護婦さんだったが、
裸足でびしょ濡れの私の姿を見て
何か察したのだろう。


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