オリジナル・レイズ
「…わかりました。少し待っていてくださいね」
小走りに去っていく看護婦さん。
濡れた髪から、顔に垂れてくる水を手で拭っていると、
彼女はすぐに戻ってきた。
手には一枚の水色のタオル。
「まっすぐ行って左手にあるエレベーターに乗って、3階です。301号室」
彼女は小声でそう言うと、水色のタオルを何も言わずに優しく手渡し、去っていった。
…お礼を言い忘れた。
ありがとう、看護婦さん。
私は体をひととおり拭くと、頭にもタオルをかぶせ
髪を拭きながらエレベーターに乗った。
全くん、私のこと怨んでいたらどうしよう。
全くんのお母さんが病室に居たら、こんな時間になんて言えばいいんだろう。
寝てたら声をかけないほうがいいのかな?
同室の患者さん起こしちゃわないかな?
緊張と不安で、なかなか3階へのボタンを押せない。