オリジナル・レイズ
…だめ逃げちゃ。
昼間会うことができないんだから、今会わなくては。
そう言い聞かせ、ボタンを押す。
3階でエレベーターの扉が開いた。
303、302、…301。
一番奥の部屋だった。
病室に書いてある名前は、全くんひとりだけだ。
高遠 全
マジックで書かれた黒い文字に、緊張が増す。
心臓の音に混じり、耳に響く激しい雨音。
…ノックしたほうがいいのかな?
一応、しておこう。
トントン
返事はない。
寝てるのかな?
そっと、ノブを回す。
広い部屋だった。6人くらいは収容できそうな。
しかし、暗闇の中、ベッドは1つしかない。
一番奥の窓際。
そこに、見覚えのあるぼさぼさの黒髪が見えた。
頭には包帯を巻いている。