オリジナル・レイズ
全くんの話はこうだった。
――全くんと特に仲のいい男子と女子が二人ずつ、渡先生と見舞いに来た。
友達は全くんの体を心配し、なんの病気か聞きたがっていたが、
先生は全くんの気持ちを配慮し、HIVであることを隠してくれていた。
全くんは、友達には嘘をつきたくなかったのと、彼らなら理解してくれるだろうという思いから、
自らHIVに感染していることを告白した。
しかしそれを聞いた途端、
友人達が全員ベッドから離れた。
花を花瓶に挿していた女子は、思わず花瓶を倒してしまい、
全くんが起き上がって花瓶に手を伸ばすと、
その女子は悲鳴を上げたという。
先生が言った。
「おい、小学校の頃から保健でやってるだろう。HIVは普通の生活じゃ感染しないんだぞ」
それを聞いた友人達は、謝った。
ごめん、つい…と言いながら。
しかし、その後ベッドには近寄らないまま
彼らは帰っていったという。