オリジナル・レイズ

…見ると、全くんの瞳にも涙が浮かんでいた。


「ばか。うつるぞ」


「回し飲みじゃ、うつんない」


「無理しやがって」


「無理なんかしてない」




私達は、自然に額を寄せ合った。




そして自然にキスをした。




軽い一瞬のキス。



本当に一瞬のキスだった。




…私は、全くんの彼女なのかな?

一度も好きだと言われたことがない。


でも、抱きしめられたりキスされたり…



期待してもいいのかな。



暗い病室の外は、雲はすっかり隠れ
月の光が窓に優しくそそぎ込んでいた。


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