オリジナル・レイズ

「…ごめんな。今日は母親が来てたから遅くなったんだ。そろそろ、帰らなきゃいけない」


「お母さん??」


「ああ、今センセーと話してるんだ。ごめんな、今日はあまりゆっくりできなくて」


「いいよっ全然!」


元気に答えたけど、本当は少し寂しい。




少しでも長く一緒に居たくて、全くんの青い傘に入れてもらい
――もう私はビショビショなのだけど――
職員玄関の方へ向かった。




ちょうど、職員玄関から全くんのお母さんと渡先生が出てきた。

全くんのお母さんは私達を見つけると、先生に軽くおじぎをし、紅色の傘を差して近づいてきた。


「全、風邪ひくといけないから、先にお母さんの車乗ってなさい」


優しく言うと、私にも軽く会釈し


「おばさんの傘入っていいから、少しお話してもいいかな?」


と訊いてきた。


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