オリジナル・レイズ

全くんが風邪…

体中に悪寒が走る。

HIVに感染し
10年も経っている身体。


急激に痩せていった感じからして、
全くんはもうすでに
【単なるHIV感染者】ではないはずだ。



何が引き金で死に至るかわからない――



「全くん、私のせいで…」


「…それは、どちらの意味?」


「えっ?」



全くんのお母さんは、ただ静かに私の目を見つめた。

怒りとも、悲しみともとれない表情で。



「どちらの、意味なのかしら。今日、雨の中あなたを助けようと駆け寄って、風邪を引いたから?それとも…」



――それとも、何…?


私は言葉の続きを待った

嫌な沈黙が流れる。


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