オリジナル・レイズ
紫陽花を見ていると
何故か胸がぎゅうっとなり、
たまらなくなった私は再び走り出した。
病院に着く。
泥だらけの足だが、仕方ない。
前回と同じく、緊急外来の門を素早く潜り
まっすぐ行ってエレベーターに乗る。
お母さんが一緒だったらどうしよう…
一瞬考えたが、その時はその時だ。
ノックしようと、
握った手の甲をドアに近づけた
その時だった。
「…全も、同じ事を考えてるんでしょう?」
ドアの中から声が聞こえる。
全くんのお母さん。
「お母さんね、心配なのよ。あなたがHIVに感染したのはあの子のせいでしょう。また何か、全に危害を及ぼすんじゃないかと…」
――何の話?
「自分の代わりに生き残った全を怨んで、あの世から還ってきたのよ、きっと。怖ろしい…」
握ったままの手に、汗が滲む。