オリジナル・レイズ
「…そういう事言うな」
全くんの声。
「あの事故は俺の不注意だったんだ。あの人は、捨て身で俺のこと助けてくれたんだぞ。俺のせいで死んだんだ。…そういう事、言うな」
「…ツバサちゃんのことは、どう思ってる?」
「…そりゃ、似てるなぁとは思ったけどさ…」
ガタッ
「――誰?」
しまった
ノックの手を下ろそうとして、ドアノブに当たってしまったのだ。
慌てて走り、エレベーターの陰に隠れる。
案の定、部屋からは全くんのお母さんが出てきて
辺りを見回していた。
すぐに部屋に戻って行ったが。
ただその時、私は泥まみれの足でドア前に立っていたので、
残った足跡できっと気づかれていたのだろう。
私に聞こえるように、大きな声でおばさんは言った。
「全、私、帰るわね」