オリジナル・レイズ

エレベーターの陰に隠れていたことは、
ばれていたのかどうかは分からない。

全くんのお母さんは何も言わずにエレベーターに乗り、帰って行った。



急いで、全くんの病室をノックする。



コンコン



「なんだよー、忘れ物?」


全くんの声だ。



「…あ、私…。ごめんね、いつも遅い時間で」


「…ツバサ…」


静かにドアを閉め、おずおずとベッドのそばへ近づく。


「ごめんね、さっきの話、立聞きするつもりじゃなかったの…あの、私、全くんのお母さんに嫌われてるのかなぁ?」


唐突な質問をしてしまった。

でも、聞きかじってしまった以上気になるし。



全くんは顔を歪ませている。いい返事をする顔ではない。

嫌われてたんだ、と悟った。


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