オリジナル・レイズ

しかし全くんの返事は、予想と少し違った。


「ツバサを、嫌ってるんじゃない。俺の母親は、前に話した…俺のことかばって亡くなった人のことが嫌いだったんだ」


「え…どうして?」


「彼女がHIV感染者だったからだ」




全くんは話してくれた。

外国に居た幼い頃のこと
それから、命がけで全くんを守った少女のこと。



当時、その町でHIV感染者だと発覚したのは
彼女一人だけだった。


原因は、後になって
幼い頃に受けた予防接種の針が使いまわされていたことだと判明した。


と言うことは

もしかしたら、同じ町の中に少女に感染させた元の患者が居たのかもしれない。

彼女と同じく、感染した人間が他にも居たのかもしれない。



しかし


その事実には誰も目を向けず、冷酷な視線や非難は彼女一人だけに

国中から向けられたのだそうだ。


感染者だと周りにバレたばっかりに…


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