Automatic Dream
「のわっ!」

目を覚ましたとき、目の前に人の顔があれば、誰だってこんな声が出る。

顔の方も驚いた様で、

「わっ」

なんて言って飛び退いた。

「びっくりした」

こっちの台詞だ、と常套句を言おうとして立ち上がったが、全身がチクチクする様な妙な感覚が。

何だ、と回りを見回してクラス全員の視線が俺に注がれているのに気付いた。

どうやら俺の起き抜け第一声は、相当なボリュームだった様で彼等の顔には「びっくり」と言う活字が躍っている様にさえ見えた。

俺は何も言えず座るしか無かった。

何も聞かなかった事にしよう、痛いヤツは放っておこう、的な空気がどこからともなく発生して教室に充満し、教室はいつもの状態に戻った。

赤らめるか青ざめるか、まだ顔面が決めかねているうちに男子生徒が一人、ニヤニヤ面でやってきた。

「どうした? 居眠りユキにしちゃ珍しい失敗だな。悪い夢でも見たか?」

「いいか、トシ。俺は夢は…」

「見ないんだろ? 分かってる、がやっぱり俺には信じられんな」
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