Automatic Dream
トシがアホな声を出すので顔を上げると、かえでが居ない。

視線の針と糸を教室へ垂らすと思わぬ所で魚がかかった。

かえでは委員長の所に居て、何やら話して居た。

こちらの視線に気付くと二言三言交わした後、こちらにやって来た。

「「何話してたんだ?」」

同時に、しかも全く同じ事を言ってしまったのは、全くの偶然だ。
やれやれ、偶然ってのは恐ろしいね。

「あは、息ぴったり。さすがだね」

「何がさすがだよ。俺はユキと息ぴったりでも、これっぽっちも嬉しかねぇぞ」

奇遇だな、全くの同意見だとは。

「で、何話してたんだ?」

「驚かして済まなかったって、言って来た」

おいおい……。

「あのな、かえで…」

…………。

「いや……良いか…何でも無い」

「?」

そう、こいつはこんな奴だ。

素直すぎる奴。

そこが良いところでもあるし、まぁ悪いところでもある訳だが。

そして唐突だが、そんなかえでの事が、俺は好きだ。

片思いってヤツで、いつからだったか、気付いたら好きだった。

しかし、俺は鶏に大爆笑されかねんばかりのチキン野郎で、未だ何も言えないでいると。

情けない限りだよ、全く持ってな。
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