Automatic Dream
声を出した覚えは無いんだけどな……。

しかし、覚えが無いだけだ。無意識に、なんて事も十分あり得る。

「違うわ。貴方は起き抜けの第一声以外は一言も喋って無い」

もうこれ以上考えても無駄なんだろうな……。

「そ、無駄。案外物分かりが良いじゃない。助かるわ。あまり時間が無いから」

つまりは心が読めると、そう言う事なんだろう。意外と受け入れるのが早いじゃないか、俺。

なんだか、少し心に余裕が出て来たな。

回りの物も状況も、徐々にその輪郭をはっきりさせて来た。

体積、簡易便所九つ分程のかなり狭い空間。

ここで簡易便所に喩えたのは、特に意味は無い。

なんとなくだ。

部屋には窓が一つ、木製の机が一つ、イスが一つ。

ドア等は無し。

到底人が通れない程小さな窓が一つあるだけで、他に外に通じていそうな箇所など無いこの部屋に、一体どうやって二人もの人間が入り込んだのか、って事も考えても無駄なんだろうな。

そして俺は何故か寝巻では無く、着た事なんかほとんど無いスーツなんかを身にまとい、同じくスーツを着た謎の女とこの個室に2人っきり。

しかし、喋らなくても良いってのは楽だな。

大変便利でよろしい。

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