Automatic Dream
俺なんか誘拐しても、身代金だって大した額は望めないだろうし。
ウチは貧乏だからな。

誘拐するんならトシとか、かえでとかの方が、家柄容姿共に俺より優秀だし、そっちにすりゃ良いのに。

いやまぁ、良いって事は無いが……。

大体ここはどこだ。

俺の住む街から最寄りの海岸まででも、最低1時間半は掛かるはずだ。

しかし状況を鑑みると、ここは港。
外は見えないが間違い無く、海にかなり近い位置だ。

俺のシックスセンスもそう言ってる。

だとすれば、どうやって僅か20分足らずでこんな所まで来れたのか、そこが問題になる。

まぁ、考えても分かんねぇけど。

「ちょっと、聞いてんの?」

「ああ……悪い、全身全霊で聞いて無かった」

本日2度目のこのセリフ。
どうやら何か話し掛けられていた様だ。

「ここに入んなさいって言ってんの」

そう言う佐藤の指差す先には、穴ががあった。

それはどう見てもマンホールで、近くに蓋も転がっている。

入れってか、ここに。

いよいよヤバいな、こりゃ。
このままでは命さえ危ぶまれる。
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